Ethernetの仕様 (MAC)

イーサネットのMAC(Media Access Control)についてまとめます。規格書ではClause 2,3に記載されています。

Claause 2.2.3 Overview of interactions

MACクライアントからは、MA_DATA.request, MA_DATA.indicationが見える。

Clause 2.3.1 MA_DATA.request

2.3.1.1 Function

MACクライアントが単一のピアもしくは複数のピア(グループアドレス時)にデータを送る。

2.3.1.2 Semantics of the service primitive

MA_DATA.requestには、destination_address, source_address, mac_service_data_unit, frame_check_sequenceが渡される。

destination_addressは個々のあるいはグループMACアドレス。 これからMACフレームの先頭に付加するDAフィールドが決まる。

source_addressは存在する場合、個々の(individual)MACアドレスを指定する。 source_addressが指定されていない場合、ローカルMACサブレイヤーが、自身に対応する値を挿入する。

mac_servie_data_unitからは、データユニットの長さを決定できる。

frame_check_sequenceが存在する場合、フレームチェックシーケンスを指定する(3.2.9参照) frame_check_sequenceが存在しない場合、MACサブレイヤが計算し、フレームの最後に付加する。

Clause MA_DATA.indication

2.3.2.1 Function

MACサブレイヤからMACクライアント(グループアドレス時には複数クライアント)へデータを転送する。

2.3.2.2 Semantics of the service primitifve

MA_DATA.indicationには、destination_address, source_address, mac_service_data_unit, frame_check_sequence, reception_statusが渡される。

frame_check_sequenceはオプション。reception_statusはステータス情報をMACクライアントに渡す。

2.3.2.3 When generated

MA_DATA.indicationは、受信したフレームが正しい形式で、エラーがなく、送付先アドレスがこのMACを指定している場合のみ、MACクライアントに渡される。

Clause 3 Media Access Control (MAC) frame and packet specifications

Clause 2で定義されているMAC Service specificationは、あくまで論理的なもので、 実際のEthernetのパケットへの対応は本節で規定している。

MACフレームは3種類

  • 基本フレーム
  • Q-タグ付きフレーム
  • エンベロープフレーム

“Packet format”

点線の領域については、サイズは固定されていない。4.4節で最小、最大サイズが規定されているが、 これは図のFRAMEの部分のサイズのこと。

Clause 3.2 Elements of the MAC frame and packet

Clause 3.2.1 Preamble field

PLS回路が受信パケットに同期できるようにするための7オクテットのフィールド。

Clause 3.2.2 Start Frame Delimiter (SFD) field

SFDフィールドは10101011固定。MACフレームはSFDの直後から開始する。

Clause 3.2.3 Address fields

MACフレームは送信先アドレス、送信元アドレスをこの順番で含む。

送信先アドレスの最初のビット(LSB)はアドレスタイプ指定ビットで、0は個別アドレス、 1はグループアドレス。送信元アドレスのLSBは0固定。

2番目のビットはグローバル管理アドレスか否かを示す。0でグローバル管理アドレス、 1でそれ以外。ブロードキャストの場合も1になる。

Clause 3.2.6 Length/Type field

一番目のオクテットの値が1500d(0x5DC)以下であるとき、MAC Client Data fieldに含まれるバイト数を意味する。 一番目のオクテットの値が1536d(0x600)以上であるとき、MACクライアントプロトコルの型を意味する。

このどちらの場合も、MAC Client Data fieldの長さがプロトコルで要求されている最小値よりも短い場合、 Pad fieldがMAC Client Data fieldの後、FCSの前に付加される。

Clause 3.2.9 Frame Check Sequence (FCS) field

32bit CRC値はMACフレームの送信先アドレス、送信元アドレス、Length/Typeフィールド、Mac Client Data、Padの値で計算する。

Ethernetの仕様

イーサネットの仕様についての調査メモ。10Gb/s, 40Gb/sあたりを中心に調査。随時更新します。

規格書はIEEE Std 802.3と呼ばれている。無料でダウンロード可能です。 下記ではPCS/PMAについても仕様を読み解いていますが、 大手FPGAベンダ(Xilinx, Intel)の10G対応トランシーバを内蔵したFPGAでは、 10G Base-RのPCS/PMAについては無料のIPコアを使用できます(参考1, 参考2)。 これらのIPコアとMACの間は、XGMIIが使われます。但し、Ethernetの仕様書のようにDDRではなくSDR動作のため、64bit幅です(156.25MHz)。

802.3uで100Mb/s動作が規定された。802.3zで1000Mb/s動作が規定された。 802.3baで40Gb/s, 100Gb/sが追加された。

802.3-2018の構成は次の通り

Section One: Clause 1から20まで、Annex AからHまでと4A。10Mb/sとMAC、 フレームフォーマットについて。

Section Two: Clause 21から33までとAnnex 22Aから33Eまで。100Mb/sについて。

Section Three: Clause 34から43までとAnnex 36Aから43Cまで。1Gb/sについて。

Section Four: Clause 44から55までとAnnex 44Aから55Bまで。10Gb/sについて。

Section Five: Clause 56から77までとAnnex 57Aから76Aまで。

Section Six: Clause 78から95までとAnnex 83Aから93Cまで。Energy-Efficient Ethernet, LLDP, TLV. Clause 80から95までは40Gb/s, 100Gb/s動作の一般的情報と物理層。 Clause 90は時刻同期プロトコル。

Section Seven: Clause 96から115とAnnex 97Aから115A。

Section Eight: Clause 116から126とAnnex 119Aから120E。200Gb/s, 400Gb/s, 2.5Gb/s, 5Gb/sについて。

ということで、Section Four, Sixあたりを重点的に読む。また、MACについてはClause 2-4で定義されている。

Clause 44.1.4.4.

10GBASE-SRはClause 49 (PCS), 51 (Serial PMA), 52 (850nm Serial PMD)に対応する。

10GBASE-Rで、特定の物理層ファミリに言及する。64B/66Bエンコーディングを用いる、 10GBASE-SR, -LR, -ER, -LRMがある。

Clause 45. Management Data Input/Output (MDIO) interface

Clause 46. Reconciliation Sublayer (RS) and XGMII

“XGMII”

XGMIIはMACとPHYの間に位置する。RSはMACのビットシリアルプロトコルをPHYのパラレルエンコーディングに適合させる。 XGMIIの使用は必須ではないが、PCSはXGMIIを想定して仕様が定義されている。 それで、XGMIIを実装しない場合も、PCSに対してはRSとXGMIIが実装されている場合と等価に振る舞う必要がある。

XGMIIは32bit双方向。

Clause 46.1.1 Summary of major concepts

  • RSはMACのシリアルデータ列をXGMIIのパラレルデータパスに変換する。
  • RSはXGMIIからの信号をPLSサービスプリミティブに変換する。
  • RSは、送信側ではデータもしくは制御文字を連続して生成し、 受信側では連続したdデータもしくは制御文字を待ち受ける。

Clause 46.1.6 XGMII structure

Reconcilation Sublayer (RS)の機能は次の図で表される。

“RS inputs and outputs”

PLS_CARRIER.indicationは、EEEもしくはリンク中断をサポートしないPHYの場合は生成されない。(46.1.7.3参照) 同様に、RSはPLS_SIGNAL.indicationも生成しない(46.1.7.4参照)

デリミタやフレーム間のアイドルキャラクタはTXD, RXDに符号化され、TXC, RXCをアサートすることで判別する。

Clause 46.1.7.1.4 Effect of receipt

プリアンブルの最初のオクテットはStart制御文字に変換され、レーン0に割り当てる。

DATA_COMPLETEはTerminate制御文字に変換される。これは最後のデータオクテットの直後に続ける。 Terminate制御文字が0, 1, 2レーンにある場合は、残りのレーンはIdle制御文字とする。

Clause 46.2.2 Preamble and start of frame delimiter

プリアンブルの最初のオクテットはStart制御文字に置き換えるので、MACフレームのSFDまでは、2TX_CLKで転送される。

Start, 0x55, 0x55, 0x55, 0x55, 0x55, 0x55, 0xD5

TXC, TXDの組み合わせと、その意味は次の通り。

“Permissible encodings of TXC and TXD”

基本的には、TXC=1については、Idle, Start, Terminateを実装すれば良さそう。

実際のXGMIIでの転送の様子は次の図のようになる(仕様書はTX_CLKの両エッジで転送するように記載されているのに注意)。

“Normal frame transmission”

Clause 49. PCS for 64B/66B, type 10GBASE-R

Clause 49.1 Overview

この節はPCSの概要をつかむため。

Clause 49.1.4 Summary of 10GBASE-R and 10GBASE-W sublayers

“10GBASE-R”

10GBASE-Rの場合も、少なくとも仮想的にはPCSに対してXGMIIが使われている。

Clause 49.1.4.1 PCS

10GBASE-RのPCSは、a) XGMIIデータ64bitを66bitに相互変換する。b) PMAに対して16bit単位でやり取りする。d) リンク確立についてMDIOで通知する。

Clause 49.1.4.5 Bit ordering across 10GBASE-R and 10GBASE-W ssublayers

PCSとPMAの間は、16bit転送だが、TX, RXどちらもLSB(bit 0) first。

CLause 49.1.6 Functional block diagram

PCSは概ね、TXでは(XGMII 32bit) -> encode, scramble, gear box -> (PMA 16bit)からなる。 RXでは(PMA 16bit) -> block sync, descramble, decode -> (XGMII 32bit)からなる。

Clause 49.2 Physical Coding Sublayer (PCS)

この節にPCSが詳細に規定されている。

Clause 49.2.2 Functions within the PCS

XGMIIとのパケットの境界はTXCn=1, RXCn=1のタイミング。PMAはブロックやパケット境界とは独立して動作する。normal modeとtest-pattern modeがある。

PCSが16bitに変換した転送データは、PMA_UNITDATA.requestでPMAに送られる。

TXがtest-pattern modeのときは、テストパターンがPMA_UNITDATA.requestプリミティブでPMAに送られる。

RXがnormal modeのとき、PCSの同期プロセスが常時PMA_SIGNAL.indication(SIGNAL_OK)を監視する。SIGNAL_OKがOKであれば、PCS同期プロセスはPMA_UNITDATA.indicationプリミティブでデータを受け取る。 ブロックの同期は2bitの同期ヘッダで行い、受信したブロックをPCS受信プロセスに送る。 PCS同期プロセスは、同期が得られた時にsync_statusフラグを立てる。

Clause 49.2.4 64B/66B transmission code

エンコーダで生成される同期ヘッダは。スクランブラをバイパスする。

“PCS Transmit bit ordering”

“PCS Receive bit ordering”

Clause 49.2.4.3 Block structure

ブロックは66bitからなる。最初の2bitは同期ヘッダ。ブロックはデータブロックか制御ブロックかのいずれかである。同期ヘッダ01はデータブロックで、10は制御ブロックである。ブロックの残りはペイロード。

制御ブロックの最初の8bitはtype field。type fieldによって残りのブロックの中身の意味が決まる。 StartもしくはTerminateキャラクタを含む制御ブロックの場合、そのことはtype fieldで分かる。 他の制御キャラクタは7bitの制御コードもしくは4bit Oコードにエンコードされる。

D_0からD_7については、TXC/RXCは0である。他の制御オクテットはTXC/RXCが1である。

“64B/66B block formats”

Clause 49.2.4.4 Control codes

XGMIIと10GBASE-R PCSでは同じ制御キャラクタのセットがサポートされている。 XGMIIの制御キャラクタはPCSでは制御コードになる。

制御キャラクタと制御コードの対応はTable49-1にある。

Clause 49.2.4.5 Ordered sets

Ordered setsは制御/ステータス情報をリンク上で送るためのもの。 remote faultやlocal faultステータスがある。Ordered setsは1つの制御キャラクタと、 それに続く3つのデータキャラクタからなる。Ordered setsはXGMIIの最初のオクテットで始まる。10 Gigabit Ethernetではsequence ordered setだけが使われる(46.3.4を参照)。 Sequence ordered set制御キャラクタは/Q/と表される。

Clause 49.2.4.8 Start (/S/)

start制御キャラクタ(/S/)はパケットの開始を表す。このデリミタはXGMIIの最初のオクテットにしか現れない。他の場所に現れる場合はエラー。 Block type fieldの値で、/S/が最初のキャラクタなのか、5番目のキャラクタなのか分かる。

Clause 49.2.4.9 Terminate (/S/)

terminate制御キャラクタ(/T/)はパケットの終了を表す。パケット長は任意なので、 /T/はXGMIIのどのオクテットにでも現れる。/T/の場所はblock type fieldで識別する。 /T/を含むブロックに続いて、/T/を含まない制御ブロックが送られると、 正しいパケット終了とみなされる。

Clause 49.2.4.10 ordered set (/O/)

ordered set制御キャラクタは、ordered setの開始を表す。 orderd setはsequence ordered setとsignal ordered setがある。 ただし、後者はreservedである。sequence ordered setの制御キャラクタは/Q/で表す。 /O/はXGMIIの最初のオクテット位置でのみ有効。 Block type fieldによって/O/がブロック中最初なのか5番目のキャラクタなのか分かる。

Sequence ordered setはPCSによってクロックレートの調整のための削除されても良い。 ただし、それは2つの連続したsequence ordered setが受信された場合に、そのうち一つだけ削除するものとする。クロック補償(clock compensation)のためにはIdleしか使わない。

Clause 49.2.7 Gearbox

Gearboxは、66bitのデータブロックを、PMAの16bit幅に合わせる。 実際のところ、66bitのブロック境界については一切感知せずFIFO方式で16bitにして送り出す。FPGAのトランシーバを使うときにはそもそも必要ない。 GearboxはWIS, XSBIを使うときにだけ必要。

Clause 49.2.9 Block synchronization

受信ロックの方法は、Figure49-14の状態遷移図で規定される。

Clause 51. Physical Medium Attachment (PMA) Sublayer, type Serial

Clause 52. Physical Mediaum Dependnet (PMD) Sublayer, Type 10GBASE-S(LE)

おおむね、EO変換についての規定。基本的にはPMAから送られてきたデータを光の0/1に対応させる。逆に受信した1/0をPMAに送る。それと、通信路OK/Fail状態の通知機能がある。

10GBASE-SRは、850nmレーザを使う。10GBASE-Rでは、Clause 46 (RS), Clause 49 (PCS), Clause 51 (Serial PMA)の実装が必須。

Clause 52.3. PMD MDIO functional mapping

Clause 45のMDIOの実装は必須ではないが、PMDの状態や制御について、 対応するレジスタやビット番号も、ここで規定されている。Table 52-3, 4参照。

Annex 44A (informative) Diagram of Data Flow

MAC層から出力される32bitがどのように送出されるか、わかりやすいのが下図。

“10GBASE-R transmit data path bit ordering”

受信したbit列をMAC層までデコードして上げるのは、下図。

“10GBASE-R receive data path bit ordering”

XGMII, XAUIは必須ではないので、とにかく、MACからの32bitを、PCSのRc,Rdに変換して、 そこから下の回路を作れば良さそう(後日追記:記事の先頭にある通り、FPGAで作る場合はXGMIIより上位を作成すればOK)。